室内で、冬から夏にいきなり環境が変わるということは、断熱性能が決定的に乏しいという事なのです。本来は屋外の温度変化に断熱という方法でオプラードがかかり、室内ではもう少しゆっくりと温度推移して、私たち人間にとっては優しい環境であることが望ましいのですが、そう言う性能を求める気運が、この国には本当に乏しかったと言わざるを得ません。75年前の戦後のリスタートの時点では、名実共に「雨風凌げば良い」というレベルで決定的に足りなかった数をまず満たすことから始まったハウスメーカーの家づくりが、未だ続いています。量産体制が大企業を生み出し、それが国家の基幹産業として経済の一躍を担うという流れから、その役目を終えた今もまだ住まいづくりの大きな役割を占めていることが、少し歪んだ日本の住まいを牽引していると言わざるを得ないのです。企業戦士と化した日本人は、毎日満員電車に揺られ一日の大半を職場で過ごしていましたから、まあ、帰れば晩酌して寝るだけというようなルーティンの暮らしでは、スポット的にエアコンを使えばそれて事足りていたのかもしれない。ましてや共働き世代が増えて、何となくイメージのステータスとしての住まいは求められても、実のある快適性と言う住まいとは少し違う方向へずれ勝ちの住まいが、今、このご時世で真価を問われ始めていると言うことなのかも知れません。始終在宅で居るということもなかった環境が、いきなり24時間家の中に家族が居るという環境に急変して、今まで見えて来なかったものが見えてきたという部分も多いのではないでしょうか。圧倒的に、温度変化が少なく、巣取れるが少ないと言うことは、住まいにとって、本当は一番根幹となる基礎性能なのです。エネルギー消費をなるべく少なく、その環境を維持するためのテクニックが断熱だとすると、私たちはこれを機に、この部分を徹底して考え、全体のボトムアップをする必要があるのではないかと思ったりします。何よりも優先されるべきものとして。(つづく)
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