2015.10.15 Thursday
時間と言うフィルターに濾過されて...。2
若かりし頃の仕事と言うものは、何となくこそばゆく感じるもので、力み過ぎであったり、配慮が足りなかったりと終始反省がつきまといますが、材料と言う意味からすれば当時の自分が羨ましくもあります。
今でこそ階段の段板は妥協してフィンガージョイントが露な集成材を使う事が多いのですが、当時はあらゆる材料が豊かと言うか、タモの厚ものの巾ハギ材を段板と蹴込み板にも使っています。厚みは贅沢にも無垢で3センチ以上もあり、その表面は浸透性の自然塗料と長年の時間が何とも言えぬ木目の美しさを醸し出してくれています。特別な手入れをした訳でもなく、日々ご家族が上り下りして足の裏で踏み、べたつけば固く絞った雑巾がけをし、普通に使っていただいた階段です。一件真新しい新建材の表情よりも、19年と言う時間は何と良い味わいに仕上げてくれるものでしょうか。逆に真新しいものが薄っぺらく軽薄に見えてしまうほどに、時間に濾過されて上手く残ったものは、それだけの魅力を蓄積しているものなのです。私などは、この風格を見るにつけ、我々が日々やっている小手先の事などほとんど無意味だとも思えてきて、仕事はごく普通に、ごく自然にと思ってしまいます。飽きがこず、いつまでも愛着をもって住まい手に受け入れられる住まいは、小手先の事では叶わないと言うのが実感で、逆にこういう時間に耐えたときに、何が残るかと言う部分で勝負していかなければならないのだと思ったりします。(つづく) JUGEMテーマ:建築
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