2015.06.30 Tuesday
アテフ・ハリムさんとのこと...。
この間の日曜日、私はつかの間東京にいました。旧知のヴァイオリニスト、アテフ・ハリムさんが奏でるヴァイオリンを聴く為です。それだけ書くとなんと贅沢な事かと言われそうですが実はそれだけではありません。かの前川国男氏設計の東京文化会館小ホールという絶好の器の中でという注釈がつき、もっと言えば前川国男は言わずと知れたル・コルビュジェの愛弟子にて会館の横にはコルビュジェ作の西洋美術館があります。1959年の美術館に続き、1961年(1961年は私の生まれる前年)、音楽・芸術の殿堂としてこのホールは建設された54年前のモダニズム建築の傑作です。以前福岡でお会いしたときに。会館が改装の為に一年リサイタルが開けない。アテフさん自身国内で一番気に入っているホールなので、一昨年まで毎年行われていたリサイタルを来年は再会するからと言い、一昨年同様、私も必ず行くと約束しました。来福の折りには連絡をもらい必ず一献交わす仲ですが、私が友情に律義な訳ではなく、ただこんな機会を逃してはならぬと無理矢理力ずくで約束をして自分を東京に弾き飛ばしたというのが真実かもしれません。笑。近年休みもほとんど取れずこうでもしなければ決行不可能。小心な私はお客様に迷惑はかけれないととんぼ返りの大冒険でしたが、やはり行って良かったと実感しています。
ホールからは、当時の生真面目な大理石のようなコンクリートにモダニズムの神髄を垣間見、建築に向かう先人の魂を感じます。そして、彼の奥様のMCの明美さんの「神に託された愛の戦士」と称されるアテフさんの平和への祈りが、心の奥の奥を鷲掴みにして揺さぶられる感覚に酔いしれました。アテフさんとは、お会いして間もなくより何となく他人とも思えず、「何処かで兄弟だったかなあ」と言い合う仲です。巨匠にそんな馴れ馴れしいとファンの皆さんには叱られそうですが、ご紹介者とは疎遠になりながらも、それ以来ご夫妻とは心温まる親交が続いています。2011年、福岡で私が仕上げた民家のリビングで、50人あまりの聴衆の前でホームコンサートをひらいてくれました。東京で私の仕事のバネルを見られて、「これは貴方が作った建物か?」と聞かれ、そうだと答えると「ここでいつか弾いてみたい」とつぶやかれた言葉を私が聞き逃さず、図々しくもお願いしたものでした。以来博多では、おでんと焼酎を愉しむ仲です。人のご縁の不思議さをこの歳になるとよくよく感じます。こんな世の中だから、自身のフィールドで何かを訴え平和な社会を維持していく努力をしなければいられない。そんな姿勢が共感でき、自分自身の立場で私もまたそうしなければと心に誓いました。音楽も建築も、人の心に直結するものです。分野は違えども、アテフさんの想いは、私の仕事に大きな喝を与えるに余りあるものがありました。アテフさんご夫妻に深謝。
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