2016.01.31 Sunday
【雑感】 万(よろず)相談所でいいじゃーないか。 1
「建築家」などと言われると身体中がムズムズしてしまう私はもっぱら八百屋さんや魚屋さんと同じように、「建築YA」を自称しています。考えてみれば、個人の八百屋さんや魚屋さんも随分いなくなってしまったものです。個人商店の生業が成り立たなくなってしまったこの国の経済やコミュニティーは大きな歪みを生み、殺伐とした拝金主義で、上から下まで何となく心に暖かさやゆとりがない。庶民の暮らしは日を追うごとに変な方向へ傾いている感じすらしてしまいます。
開業から実に28年、まあ潰れようもないと言う理由だけでここまで来ましたが、それはそれは沢山のお客様、お仲間たちとのふれあいの中で、無数のドラマに彩られた日々を現在もばく進中と言った感じです。建築設計事務所という体ではありますが、「住まい」づくりがその主体となって以来、弊社はつねに万相談所です。嫁姑問題から親子の確執、近隣とのご近所付き合いからご家族の健康問題、仕事の相談から家計のお話、住まい手の人生そのものを共有するところからしか始まらない私の不器用な仕事の仕方は、住まい手の問わず語りをたっぷりと伺う事からなのでどうしてもそうなるのです。気がつけば、赤の他人がいつしか親戚のおっちゃんのようになり、子どもさんの入学や受験に一喜一憂する関係になっています。私自身、そう順風満帆な人生と言えるものでもなく、もう半世紀あまりを生きてきて思うのは、人間の生涯などと言うものはあっという間で、必ずしも思い通りには進まないと言う事。ただ、そのもがきの中で、知恵の足りない者同士が、知恵を出し合いふれあいしながら、一つ一つ駒を進めていく事こそ、豊かさなんだなと思ったりします。「設計事務所」「建築家」などと聞けば、少なからず、敷居が高い普通の感覚をお持ちの住まい手たちとどう向き合うかが私の仕事なのだよなあと思ったりします。(つづく)
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