2016.03.31 Thursday
居場所をつくるということ...。3
住まい手ひとりひとりに無限の選択肢がある中で、その方にいつまでもフィット感のある「居場所」をと考えるのですからその責任は重大です。また、そうやって私を信頼してくださる方のお仕事ですから、仕事が終わる頃には私の中には自ずと墓場まで持って行かなければならないその方の膨大な事柄が残ります。「そんな事まで委ねてくださって」と思う事柄は、私の中だけでずっと沈殿しています。時には意気投合し、時には反駁し合い、丁々発止を繰り返し、そして住まいが出来上がってからも、おつきあいは続くのです。単純な物売りと、我々の生業とが少し違うのはそう言うところにあるのかもしれません。それがこの仕事の醍醐味であり、また大変さでもあるのです。
めったにないのですが、数年前にご縁がありお会いして住まいづくりの依頼を受けかけたお客様に、まずは比較するので一案と言われ、この稿でお話ししたような事を丁寧にご説明し、まずは誰に委ねるのか決められた方が良いとお話ししましたが、結局話はその後立ち消えになり、計画地にはその後某大手ビルダーの販売住宅が建っていました。私はやはり軽々にプランなど出さずに良かったと思いました。悩まずに、カタログや展示場であらかじめ確認できるそういう住まいで満足できるのであれば、それはそれで幸福な事です。ただ、近年そう言う住まいが決して我々が考える住まいよりも安価ではなく、むしろ高価だと言う問題はありますが、総じて我々と徹底して長期間にわたって産みの苦しみを味わいながら創るよりもお手軽である事は確かです。そこに落ちつくのならば、私が悩む必要もないのです。
そう考えると私を支えてくださるお客様は、何と寛大で辛抱強いかと言う事になります。本当に感謝しなければなりません。(つづく)
JUGEMテーマ:建築
※あなたのPC・スマホからのワンクリックが励みです。笑
←ここも!ここも!