この稿の最後になります。
整理すれば、照明と通信、冷蔵庫と温度上昇を冷やすためのエアコンを電気でまかなうとして、暖房や給湯は熱エネルギーですから、まず太陽熱の利用とバイオマスの利用を検討するべきかもしれません。日本人は湯船に浸かる入浴をするために、給湯のためのエネルギーが欧米よりも遥かに大きい。これに消費する大量のエネルギーを電気エネルギーでまかなうというのは、まともに考えればロスも多くなかなか厳しいことなのです。
何よりも、室内の空調のための負荷は、その住まいの基本性能によって決まります。どれほど屋外と熱が遮断できるかと言う断熱性能がエネルギー消費を絶対的に決めてしまうのです。つまり、来るべき熟れた価格の家庭用のバッテリーで、創った電気をある程度貯められる時までに、先行してやるべきことは、基本性能が高い住まい空間を作ると言うことです。
冒頭で書きましたが、好むと好まざるとこの国の格差社会は広がっています。ドイツの賃貸アパートでは、室温が20℃以下になる空間は賃貸してはいけないと言う決まりがあるそうです。それ以下の温度になることが分かれば、借り主はその改善を求めることが出来て、家賃の一部減免などもあるのだそうです。賃貸アパートでこれですから、ましてや戸建住宅など求められる性能はそれ以上であることは自明のことです。最低限の暮らしの「質」と言う部分で、室内で暑い寒いを感じてしまうと言うことは、あり得ないと言うことだと思います。
どんなに格差が広がっても、人間として生存する最低の権利として、そう言う社会でありたいと思いますが、少なくともこの国は、むしろ逆行してエネルギー奴隷を創りだし、消費をあおり、なければ困るだろうとお為ごかしにそのコストを吸い上げていくシステムが未だ根強く残っています。その悪循環からの離脱として、庶民レベルで高性能な住空間を少しでも増やしていくことは遠道のようでむしろ最短距離のようにも思えてくるのです。(おわり)
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