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「練る」ということ...。5

 住まい手が自分の暮らしぶりから練って生み出した、こういう暮らしをという「種」を、今度は私たちが発芽させ開花させ、実を結ぶまで練り上げます。それは単純な効率重視の取捨選択ではなく、まさに行きつ戻りつの作業です。同じ事を繰り返す事が発酵を促し、内容を味わい深いものにします。演奏家が、一枚の楽譜を演奏するたびに発見があり、その演奏の深みを増していくように、私たちの仕事も練る事によって時間の流れに抗わず、時間の流れに風化しない空間の構築をしていくのだと思います。薄っぺらい取捨選択だけで上っ面だけの辻褄を合わせた感じで進んでいくと、つまり飽きの来るようなものになってしまいます。奇をてらったデザインはそういう部分で産まれてくるのかもしれません。絶賛されるものよりは、じわじわ褒められるような仕事にしたい。食らい付きが良くても、飽きられるような仕事にしたくない、そんな想いがあります。考えれば、何十年も暮らし続ける住まいです。そこの数ヶ月を端折ってどうするかとよく思いますが、かつての民家と言われるものは、原木を切り倒し製材する季節を選び、組んで小舞壁を仕上げていくのにもひと梅雨あててと何とも時間のかかる形で作り上げられていきました。若き日に京都で垣間みた社寺の世界では、工期3年とか5年は当たり前です。それを数ヶ月でバタバタとやる方が無理がある。時節柄、それも仕方ありませんが、そんな中でも、ためらわずに練っていくということは、怠らないようにしたいといつも思っています。

 何だか仕事が遅い言い訳のようになってしまいましたが(笑)、それは逆にお客様の中の発酵が進むまで待つと言う事でもあります。やはり、練れば練るほどに、シンプルになり、飽きの来ないものになると言う事は、まぎれもない事実だからです。(おわり)

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| 住まいづくりのヒント | 07:16 | comments(0) | trackbacks(0) |
「練る」ということ...。4

 そう言う意味で言えば、私たちは職業柄、ああでもないこうでもないと始終考える事に慣れています。むしろ経験値から普通の人よりも得意かもしれません。そして、その散々時間をかけて構築してきた事からためらいなく発想を切り替える事も得意です。渾身の思いで創り上げてきたものが、クライアントのひと言で一瞬にして瓦解するなどと言う事は日常茶飯事ですから、言わば忍耐強く構築していく事を鍛え上げられてきているのかもしれません。もしかすると、現代人が少し忘れてきた感覚を、職業柄、我々は時代に影響を受けずに持ち続けてきた奴らなのかもしれないと思うと、最近その使い道もあるかもしれないと思ったりします。

 幸福である感覚は、決して楽で何もする事がなく怠惰であるという事とイコールでは決してありません。きっと、アクティブに何かを遂行していくプロセスの中にこそ、大きな喜びが満ちているのだと思います。それはストレスと背中合わせであり、ストレスから逃げ回ってばかりでは得られないのが幸福なのです。例えば、住まいづくりは、住まい手が自分の暮らしをよくよく見つめ直す一大イベントです。他人任せでフィット感のある住まいが構築できる訳ではありませんから、住まい手は自分の暮らしを深く考えます。そう考えると昨今日本人がカタログ販売のような「家を買う」ということにためらいがないのも分かるような気がします。本当の納得はそこにはありません。もちろんプランや、どうやって実現していくかと言う事は我々プロの仕事ですが、開花し実るための種のようなものは、住まい手が練らなければ始らないのです。それぞれの立場で、禅問答のような立体パズルが続きます。(つづく)

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| 住まいづくりのヒント | 07:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
「練る」ということ...。3

 私たちの仕事の中で、昔はトレーシングペーパーと言う少し透明感のある紙を使い、敷地図に重ねてプランを描き、ある程度まで来ると新しいトレペを重ねてまた下の紙の大切な線だけを上から写し取って修正をして、という推考を重ねていく作業がありました。気がつけば薄いトレベも重ねて厚みを増すほどになっていたりもしました。今でこそバソコンのモニタへの中でいきなりCADで考察する若い方も増えましたが、ローテックな世代の私は、本気で集中する時にはどうしても紙を使ってしまいます。一枚下のおぼろげな線の中から、大切な線を浮かび上がらせて、必要ないものは徐々に消えていく。そんな感じです。そうやって頭の中を整理しながら、行きつ戻りつの思考を重ねていく事が精度を上げていくのですが、言わば一方向の取捨選択ではなく、立体の多次元パズルですから、一旦捨てたものが再び蘇ったり、終始大前提だったものが急に覆されると言ったことを重ねながら、段々焦点が合ってくるものなのです。住まい手の一挙一動を思い返しながら、頭の中の空間で実際に動く住まい手に聞きながら進めるプランは、終始難航を極めますが、またそれが私たちの仕事の喜びでもあります。

 私は仕事が遅い方で、一枚のプランが出てくるまでに本当に自分でも辛いほどに時間を要します。「AI」であれば、最短時間をもって無駄のないプランが提示されるかもしれません。笑。ただ、住まい手にとっての最善のプランの答えは無限にあります。住まい手と私たちとの瞬間的なマッチングによってそれから何十年もそこにあり続ける空間の方向性が決まります。消去法で最短効率で選択していくと瞬時に出てくる答えというものも想像できますが、本当はそう言う要素に加えて何かもう一つ、スパイスのようなものが必要なのかもしれません。私はそのために行きつ戻りつをするかもしれないのです。

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| 住まいづくりのヒント | 07:23 | comments(0) | trackbacks(0) |
「練る」ということ...。2

 近年社会が幼稚化して、権力の我儘放題の政治にNOを突きつけきれずに何となく流されていくのは、まさに私たちひとりひとりが安・近・短に慣れすぎて、便利なもの、お手軽なものに逃げ、思考を鈍らせいてるからに他なりません。感覚的に他国に比べて幸福度が低いのも、実際にリアルに一刻一刻と時を過ごしている実感に希薄なためだとさえ思えてきます。私たちのかわりに、考えてくれる人工知能「AI」が近年加速度的に進化して、現実に役に立つようになれば、かなりの職業が「AI」 に取って代わられると言うリアルなお話もあるほどです。確かにより安全にとか、より効率的にと言うテーマに沿って物事を誤差なく選択処理していく能力は確実に私たちよりも優れているでしょう。ただ、逆に言えば、「AI」には、迷ったり悩んだり、思考が行きつ戻りつしたりと言う非効率な事をあえて重ねていくことは出来ないのではないかと思ったりします。ムラがない分、効率的ではあっても、そう言う部分が全くない世界かも知れません。ただ、曖昧な滲んだ領域は実は必要です。よく言われる創造的な仕事は最後まで人間に残されると言いますが、私たちの世界も、「AI」に取って代わられる部分と、人間固有の残る部分に分けられていくのかもしれません。

 住まいづくりで、ファーストプランを提示して、お打ち合わせの中で修正が加わり千変万化していった間取りが、最終的にファーストプランに集約されていくと言うパターンはこれまで何度も経験しています。私に言わせれば、クライアントにとって最初に見たファーストプランと、紆余曲折の末に再び現れたプランは実は同じものではないと言う事が大切ではないかと思ったりします。例えば「AI」は、元に戻っただけと言う判断を下すかもしれませんが、実は、私はこの部分に住まいのプランなどの一番大切なエッセンスのようなものがちりばめられているのです。 (つづく)

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| 住まいづくりのヒント | 05:51 | comments(0) | trackbacks(0) |
「練る」ということ...。1

 世の中は、安・近・短が良しとされ、あらゆるものが便利・簡単の文字に踊っています。確かに便利なのですが、そう言うものに慣れすぎてしまうと少々小難しい話になると鼻から拒絶反応が始って、大切な事まで簡単に済ませたいとなってしまう事になりかねない。私などは少し心配を抱いています。ほんとうは、よくよく考えたり悩んだり迷ったりする事の中にも、大切な事が一杯含まれています。全てを端折ってしまうと何時しかそんなチャンスすら見逃してしまうのではないかと思ったりするからです。忙しい毎日ですから、簡素化できる部分はなるべく簡単に行って、少しでもゆとりの時間を作りたいと言う気持ちはよくわかります。しかし、そこにも行き過ぎはかえって、日常の中の小さな幸せを知らず知らずのうちに足蹴にしてしてしまう危険性も孕んでいる事を少し意識するべきだと思います。

 この国は今、大変な岐路にさしかかっていて、日々お上のする事から目が離せませんが、上ほど庶民を「便利・簡単・楽」さえ少しまぶしておけば文句は言わないと高をくくっているようなきらいがあります。日々の暮らしで余り幸福感を味わっていない庶民の割合が先進国でも異常に高いこの国で、一日も早く雰囲気を変えていきたい部分だと思います。住まいづくりなどと言うものは、まさによくよく考えたり悩んだり迷ったりの連続です。頭に浮かべ紙に描き、紙を重ね下の紙の線を写し取りまた描き直しと言うのが私の日々の生業ですが、そうしていかなければ出てこないことは沢山あります。今回はそう言うじっくりめの思考のお話です。(つづく)

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| 住まいづくりのヒント | 10:53 | comments(0) | trackbacks(0) |
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