さて、最後の稿です。今回は、これから建てる住まいの正義についてお話ししました。少子高齢化、人口減少が雪崩のように押し寄せてくる現実を受け止めれば、住まいは数的にはすでに余っている。数的に余っているものを、あえて新しく建てる必要があるとすれば、そこには何らかの理由と言うか必然的な「正義」がなければならないのではないでしょうか。余っている住まいが、優良な、今後も済み続けるに値する住まいであれば、本当に建てる必要はないのですが、スクラップアンドビルドを続けてきたこの国の住まいは、残念ながらそんな魅力的なものではありません。であれば、新築の住まいの正義は、「良いものに更新する」と言うことにあるのです。これまでと同じ、20年で魅力を失う家、家族の世代交代について来れない家、20年もすれば無価値となり売買も出来なくなる家をもう建ててはいけないのではないかと思うのです。さらに残念な言い方をすると、現在も建て続けられている住まいの大半が、過去のスクラップアンドビルドの住まいを引きずってしまっている現状がありますから、業界も建てる方もよくよく考えなければならないのです。少なくとも、2020年に始る省エネ法義務化は、この魅力を担保するものではありません。もっともっと高性能であることは十分にできることであり、今後の新築には必須のことなのです。義務化が産まれれば、義務ギリギリの住まいは存在してきます。建てる側がそう言う選択をしないことが今の住宅事情を改善する一歩だと思うのです。むやみに建てない。既築住宅で救いようのある住まいはレトロフィットして住まい続ける。あえて新築する住まいは今後の50年を見据えて建てる。そんなところでしょうか。少しずつ変えない限り、社会は変わりません。孫も、子も、生涯年収のかなりの額をつぎ込む国などこの国以外にありません。3代住み続けることができれば、負担は各代1/3です。そんな単純計算からも、そんな家なら今よりも少し予算をかけてもお徳だと言うことが分かります。住まいの時間スパンは50年、100年であるべきです。少しずつでも変えていかなければ、国の豊かさは蓄積されていかないのです。(おわり)
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