住まいづくりの業界の人間の一人として切実にに思うのは、職人さんの不足です。大工さんはもとより、左官さん、製作家具屋さん、建具屋さんなどが日に日に減っていっているように思えてなりません。この先どうやって木造住宅を成立させていくかと言う事は様々な問題を含み難しい問題ですが、真剣に考えないともうすぐそこには差し迫って深刻な状況が見えていると言えます。職人さんを育てるのか、工法を進化させていくのか二者択一だと思うのですが、どちらも差し迫った変化の兆しは見えてきません。いくら我々が絵を描いても、つくれる人がいない時代も来ないと見限らないのです。
また、一般的な軸在来工法と言われる今の木造のつくり方と、伝統的な日本の木造の工法を同じものだと誤解されている方も少なくありません。実は別物です。もはや伝統工法で住まいを一から建てる為の大工さんなどというと、益々いらっしゃらないのです。軸在来工法は、言わば戦後の日米折衷方式で、土台を基礎の上に横に敷き、それに柱を突き立ていく方法は、そもそも日本にはなかった(日本は束石に直接立っている石場建て)工法です。それが、足元の剛性を確保し、剛性を向上するのには良かったのですが、基礎と土台によって床下に湿気が溜まりやすい工法になってしまった。その問題は完全な解決には至っていません。今も基準法上に、強固にする為に連なっている基礎に、換気用の穴をあけろと文言が残っているのは、その時の矛盾の名残です。基礎断熱工法が出てきた20年以上も前の事、この法律には随分悩まされて現場で検査官と良く喧嘩したものです。やがて、非合法だろうが我々のようにつくり始めていた基礎断熱の事例の方が利に叶っている事が証明されて、その後非合法のレッテルは取り払われて今に至ります。つまり、まだまだ日本の住まいは恐れずに変わっていくべきなのだと思います。
この二つの点から、私は日本の住まいはいまだ発展途上で、まだ大きく進化して構わないのではないかと思っています。伝統を振りかざす人ほど、この辺りの整理が出来ていない方が多い。勿論、伝統の守るべき事はしっかり守っていくべきです。社寺の現場が建築のスタートだった私にとっては、それは当り前の事です。(つづく)
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